吉田 隼人


はい、いいえ、どちらでもない春の野は色づきを深めてゆくばかり

土岐友浩『Bootleg』(書肆侃侃房:2015年)

できるだけ「どちらでもない」は選ばずに、はいかいいえで答えるようにしている。メンタルテストその他の話だ。しかし世の中には「どちらでもない」曖昧な領域が、豊穣なグラデーションをもって広がっている。そのグラデーションそのままに春の野は広がっていく。はい、とも言い切れない、いいえ、とも言い切れない、どちらでもないの領域に春の野原が広がって、そして色づきを深めてゆく。

はい、いいえ、どちらでもない、という言葉の領域だけの言葉を、色づきを深めてゆく春の野原という実景とつないでいく。言葉だけの言葉と、後ろに大きな広がりをもっている言葉とがシームレスにつながっているのがこの一首の勘所と言ってよいだろう。そのなだらかな、それこそ春の野のようなつながりを感じながら読むと気持ちがいい。