永井 祐


湯に浸かるように地面に胴体をあずけて留まる鳩 早朝

浪江まき子

 

座っている鳩、というものを大きくフィーチャーしている点でまず印象に残った歌でした。
鳩ってときどき座ってるんですよね。わたしの生活の範囲での話ですけど、その目撃のレア度が絶妙というか、アイスの当たりくじみたいな確率で座っているやつを見かける気がします。
鳩は基本せわしなく動いているので、座ってるやつを見つけるとちょっとうれしい。
落ちついて、安心している感じがします。まったりすることあるんだ、みたいな。どうだかわからないけど。

今日の歌は、その鳩が座るのを描くのに大きくコストをさいている。というかほぼ一首まるごとかけているのがいいなと思いました。
「湯に浸かるように」は比喩で、沈み込んでいる感じをあらわし、
「地面に胴体をあずけて留まる」はとてもくわしく言っていて、鳩の体の重量感みたいなものを読んでいて感じます。
「浸かる」「あずける」「留まる」と描く言葉に動詞が多い。動きのない景を動的に描くというか、むしろその静止して見える短い時間が、多くの動きによって成り立っていると気づかされるような感じがします。
そして無心に描いているという印象があります。描く主体のほうの心情が描く手の動きに吸い取られるように、タッチが充実しているんだけど、鳩に託す感情がべったりしない。
その上で対象にかなりしっかり向き合っていて、こういう歌は口語だとちょっとめずらしいかもしれないと思いました。

と、書いていて思いましたけど、この歌のタッチは写真より絵のそれなのかなと思いました。絵って「描く時間」というものが折りたたまれるという話がありますが、この歌って止まっている対象に対して描き方のほうは時間性を持っているという感じがします。

それで、最終的に座っている鳩はかわいい。
デフォルメなしで描き込まれた鳩がかわいい。
こびないやつの方がかわいいというのは、動物などだと特に、おうおうにしてそうだと思います。