灯をともすものみな異国の詩を唱え表通りに冬がはじまる

鈴木加成太『うすがみの銀河』KADOKAWA,2022.11

 

今週に入ってからぐっと寒くなり、街はすっかり冬の気配の漂うようになりました。

 

「灯をともすものみな異国の詩を唱え」。

クリスマスの時期になると、ありとあらゆるものが電飾をまとうようになる。

「異国の詩」は店先からこぼれだすクリスマス・ソングの言い換えととりました。

そうして、「表通りに冬がはじまる」。

人通りの多い「表通り」の、にぎやかな様子が彷彿とさせられるようです。

 

「灯をともすもの」という表現は、まさにろうそくに火をともすような、しずかな幻想的な光景を彷彿とさせられます。

それは「みな異国の詩を唱え」もまた然り。

本来ならばにぎやかな様子を捉えたはずの言葉たちが、静謐なたたずまいをしているのがこの歌の妙でしょう。

 

ごくありふれているような光景を、丁寧に掬い取り、うつくしい言葉で七五の調子にのせる。

歌を読む喜びを思い出させてくれる、端正な一首です。

 

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