江戸 雪


婚姻のつめたくひかる虹のため足らざる色を持ち寄りにけり

山田富士郎『アビー・ロードを夢みて』(1990年)

婚姻をひややかに呪う歌が多いのは塚本邦雄。
神聖な儀式としての婚姻に、そのうらがわにある人間の負の感情を詠まずにはいられなかったのか。

箒売りにもとめし笞の一条のみどり 婚姻寸前の幸   塚本邦雄『緑色研究』

塚本とおなじようにこの虹の歌も、やはり婚姻をただ喜びとして受け止めているわけではない。
だがいっぽうで、世界をまるごと呪うといった塚本のような負の感情はない。
婚姻とは、「つめたくひかる虹」を映し出す存在であり、「虹」そのものなのだ。「虹」は感動的だがすぐ消えてしまう掴みどころのないもの。〈永遠と呼ばれるもの〉や〈運命〉と同じ。
婚姻は、人生において大きな出来事である。けれど、それをそんなに信じているわけでもない。
この気持の不確かさにひきよせられる。
ひとつの決断をし、ターニングポイントに向かうときの緊張感。
それと同時に婚姻は、自分自身を幾度も見つめなおす暗い作業なのである。

「足らざる色を持ち寄りにけり」は愛の暗示があり、ここですこし夢をもたせてくれる。
婚姻のためには、今の自分たちには何かが足りない。
それが何なのかはわからないが、なんとかして不格好であっても虹を作りだそうとする若さは、すがすがしく胸にひびいてくる。