プラカード持ちしほてりを残す手に汝に伝えん受話器をつかむ

岸上大作『意志表示』(1961)

 岸上大作は、1939年生まれだから、生きていれば今年で71歳になる。

それを考えると、時間はずいぶん遠いところまで来たのだなあと思える。

存命ならば、どのような人生を送っているだろうか。歌を続けているだろうか。そういう興味がつよく沸くひとりだ。

今から思えば、安保闘争は何だったのか、なぜそこまで熱くなったのか、と不思議に思う。しかし、それは後から思うことであって、その当時を知る個々の人間の胸の中にそっとしまわれている思いに違いない。

掲出歌からも、今から見ると、恥ずかしくなるほどの純朴な思いがにじんでくる。

フランスや中国など、今でも盛んにデモをやっている国はある。日本人は老若男女みな平和と安定に骨抜きにされてしまい、デモが少ないらしい。

デモの光景が携帯電話でライブ中継される時代。

公衆電話の順番を待ち、硬貨を入れて、ゴツイ受話器を握りしめながら恋人を通話する。その熱さは別世界の物語のように聞こえる。それはもしかすると、語り継がれない分だけ、戦争よりもリアリティがないかもしれない。

「プラカード持ちしほてりを残す手に汝に伝えん受話器をつかむ」への1件のフィードバック

  1. 学生運動を闘った世代には、いつまでもリアリティのある、岸上大作の作品です。

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