そこがあなたの岬でもあるというように光翳ろうなかの頬杖

永田和宏『後の日々』(2007年)

光がゆらゆら揺れている。まぶしい。
光を揺らしているのは木だろうか。葉擦れの音まできこえてきそうだ。
そしてとても落ち着いた空間をおもう。
それは「岬」のせいかもしれない。
海にせり出した、ひとがあまり行くことのない場所。風や太陽に曝されているとても孤独な場所。

「あなた」のなかに、<何か>がある。
それは確かに感じられるのに、触れてはいけない、口にはできない。
言葉にはせず、空間を共有しあい、黙っているだけでいいこの「光翳ろう」あなたとの距離は、とても豊かなものを包んでいる。
肘をついて、頬を支えている手。それは孤独の象徴のような「あなたの岬」。

この歌のすべてをささえているのは、「あなた」の「頬杖」を見つめている視線だ。
「そこが」という場所は、むろん「あなた」の「頬杖」であり、「あなた」のからだが存在する場所であり、なによりも、たったひとつの場所なのである。
唯一の存在としての「そこ」はとても美しくさびしい。

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