魚村 晋太郎


こりもせず光のほうへ手を伸ばす私のような蔓 クレマチス

槌谷淳子『ホワイトライズ』(2006年)

クレマチスはつる性の園芸植物。
日本に自生するカザグルマや中国原産のテッセンを交配してつくられる。
大きな花びらに見えるのは萼片で、もともとは白や紫だが、ピンクや青など、さまざまなものがある。
テッセンは夏の季語だが、クレマチスは4月頃から咲きはじめる。

AのようなB、という比況の表現には、①文字通りAのようなBという場合、②実は逆にBのようなAといいたい場合、③AとBとをむすびつける作者の価値観や心理状態を提示する場合、がある。
クレマチスの歌は、②の場合で、私のような蔓、といいながら実は、クレマチスの蔓のような私、のことを詠っている。

主人公は傷ついて、しばらく自分のこころをとざして引きこもるようにしていた。
原因はなんだろう。仕事、ということも考えられるが、きっと恋の歌だ。
二度と恋なんてしない、とふさいでいた気持ちが、時間の経過とともにすこしずつほどけてきた。

あたらしい恋をみつけたのか。
あきらめかけた相手にもう一度思いをぶつけてみようとしているのか。
蔓は、しがみつくものをもとめて宙をさぐるように伸びてゆく。
不安とはにかみ、そしてあたらしい季節への期待が、のびやかに詠われている。