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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
久我 田鶴子
押し入れの天袋に入り朝までを水から逃れしと人はまた笑む
ねえちやんは帰れ分がンね奴は帰れとぞ言はれつつわが併走す
たくさんの目が見ひらいてゐると思ふシンクに水を細くこぼせば
午前五時とほき林に鳴き出づる蟬ありて空を水ながれ初む
春は花の
磔
はりつけ
にして木蓮は天へましろき杯を捧げつ
雪道にぽつりと落ちている松の小枝の緑なまいきである
読むべき本すでに読みつと言ひて子は図書室登校やめてしまへり
月かげを
背後
そびら
に溜めてなかぞらを量感すごき五月のむら雲
この沼の底に冥府はあるならむ「はや舟に乗れ、日も暮れぬ」の声
童貞に向けられている放送を処女の私はひっそりと聴く
君が死を聞きし夜より通夜までの四日間吾に経血のあり
産めば歌も変わるよと言いしひとびとをわれはゆるさず陶器のごとく
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