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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
魚村 晋太郎
冬の欅勝利のごとく立ちていむ酔いて歌いてわが去りしのち
耄(おいほ)けてぬくもりがたき床ぬちに入るるを思へはだか童女(わらはめ)
冬池に眠る白鳥の華やぎに似し白菜を厨に殺(あや)む
はつ霜のとけて光れる畑土のへだたれば永久にやさしき父よ
ふたつつめたく掌ありて白樺の幹に冬陽を確かめている
垂直の街に来る朝われらみな誰かうまれむまへの日を生く
冬は冬の枝かたちよき玉蘭(はくれん)につくづくとゐる一つひよどり
手のひらに豆腐ゆれゐるうす明かり 漂ふ民は吾かもしれず
自らにつぶやくように小(ち)さくなりしかれども炎(ほ)はおさまりみせぬ
子は天与の者にてあるか秋の陽は贋金(にせがね)のごと黄菊を照らす
苦しみの実りのごとき柿ありて切なしわれの届かぬ高さ
雨蛙刺されしのちの脚いたく長しと思ひぬ冬庭の鉢
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