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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
佐藤 弓生
透きとほる袋を揉んで買ひしもの老爺はひとつひとつ詰めをり
君が今どこかで濡れている雨がここにも降りそうで降らなくて
松の樹におまへも立つたまま老いてみるがいいさと見下ろされたり
ひとりきてひとりたたずむ硝子戸の中の青磁の色のさびしさ
足早のギマールが地下鉄に乗るまでを確かめ秋かぜの中
クロアゲハ横切る木の下闇の道 許せなくてもよいのだ、きつと
月出でて棹影しかと水にあり付箋のごとく ここに 見えるか
赤煉瓦倉庫の海べ胸もとの漆塗り朱のブローチ冷ゆる
「もう秋ね」「もう十月ね」もうという枕詞があるかのごとし
シュリーレンさよならゆれるシュリーレン甘い生活だったシュリーレン
虚空とぞ言ふべかりけり蝙蝠の飛ばなくなりし団地の空を
剪定の枝の香りの鉛筆を何本も盗らる 何本も削る
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