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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
前田 康子
ひと穴に一匹づつ待つ蟻地獄ベージュの砂をへこませてゐて
くらあい誰もゐない博物館大きなほとけさまがぼくをみつめてゐる
このごろの日暮れおもえば遠天を あじさいいろのふねながれゆく
臼歯ほどの消しゴムを取りに少年は小教室に戻りて来たり
ロベリアの青きが風と揉みあえり 巴御前は素手でたたかう
十年(とせ)前に断(き)りたる脚(あし)ふと見ま欲しく、訊(たづ)ぬれば、あでやかに笑ふ看護婦
亡き人の歌集を一日(ひとひ)ふた日読みつぎて思はぬところに幸(さきはひ)があり
たよりなく白いお前が本当に褐色のあの蝉になるのか
眼の悪き富榮が太宰に命じられ眼鏡はづして歩む三鷹は
髪切虫籠に鳴かせて少年の日を脱けんとす我も我が子も
夕映えに見つめられつつ手首という首をつめたき水に浸せり
歳月の蛇腹一瞬ちぢみたりちひさなちひさな新生児見る
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