2018年11月のアーカイブ

駅で見た猫の写真がこの町のすべての猫の始祖だと思う

もみぢいよいよ燃えて一切まにあはぬ我のひと日を笑ふうつくし

梟(ふくろう)に禁じられているごとし女同士でテニスすること

おーい列曲がつてゐる、と言ひかけて 眼閉ぢれば春の日はさす

さらさらさらさらさらさらさらさらさらさら牛が粉ミルクになってゆく

シラバスの重さなつかし学生が春のベンチで履修に悩む

いかなるものをも置かぬ斎壇となりたり暮るる野の地平線

夢見ずにねむり足りたるわれの身は檸檬をしぼるちから出だせり

どのレジに並ぼうかいいえ眠りに落ちるのは順番にではない

したたかにその身を打ちて自販機の底に気絶の缶コーヒー取る

体重は二〇グラムで生きてゐる雀ねむの枝(え)にゐて揺れやまず

〈柿死ね〉と言つてデッサンの鉛筆を放り出したり娘は

くちばしを開けてチョコボールを食べる 机をすべってゆく日のひかり

何故ああであつたか 神の沈黙は押し入つてくる扉閉めても

炎天に悲しい胸が光るまで僕はあなたと広場に立てり

コマーシャルのあひだに遠く遅れたるこのランナーの長きこの先

天皇が原発をやめよと言い給う日を思いおり思いて恥じぬ

藤棚のやうに世界は暮れてゆき過去よりも今がわれには遠い

尽くすほど追いつめているだけなのか言葉はきみをすずらん畑

勢ひのある白雲よ一色(ひといろ)のからだすみずみまでうごくなり

買い被られているようであり馬鹿にされているようでもある真冬の西瓜

不自由に生まれたかったカーテンの卵弾けて蜘蛛が溢れる

いろいろなときにあなたを思うだろう庭には秋の花が来ている

腕時計くるひ始むるまひるまにゆるく人だかりに分け入りつ

残雪は砕いたオレオをちりばめたバニラアイスでもうすぐきえる

生卵片手で割れば殻だけはこの手に残るきっともう春

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