さいかち 真


全速の自転車に脅え日日あゆむこの街に来てはじめての夏

島田修二『草木国土』(1995年)

 舗道を暴走する自転車が問題になって久しい。この歌集が出てからすでに二十年もたつのに、状況はあまり改善されていない。道交法も改正されて自転車は車輛扱いとなったのに、マナーの悪い自転車は依然として存在する。私もぶつかられそうになって、ひやっとしたことがある。たしか堀江敏幸がこのことをエッセイに書いていた。

それはともかくとして、久しぶりに島田修二のこの歌集を取り出して、実に心が安らいだ。恥ずかしながら、私は若い頃は、島田修二の歌をあまりおもしろいとは思わなかった。抄出で知ったベラフォンテの歌のような絶唱はあるにしても、歌集を買って読んでおもしろいと思える歌人には見えなかった。それが、ある時から島田の平淡で当たり前な言葉の使い方が、しみじみといいと思えるようになって来た。そのわけは、自分でもよくわからない。ちょうど五月の新緑の時期にぴったりな気がするのである。あとは晩秋の季節になったら、また取り出してみようと思う。

 

エノラ・ゲイ頭上過ぎにき標的を外れし軍の少年なりき

 

よく知られていることであるが、作者は訓練生として江田島の海軍学校に居り、広島の原爆の雲とその後の大火を遠望した。