谷川由里子「シー・ユー・レイター・また明日」(『ねむらない樹』vol.2、書肆侃侃房:2019年)
雨と話せたらどんな会話になるのだろう。すぐに落ちていってしまう一滴の雨だれとなら会話は成立しないような気がするし、やはり一定期間持続して降る「雨」という概念だろう。会話が成立するためには相手が概念としての「雨」でなければならないところがおもしろい。
しかもわたしは今まで使ってきた日本語をもしかすると捨ててまで、概念としての雨と話そうとする。そこまでして雨と話したくなる瞬間なんて人生に訪れないような気がするが、日本語ではなく雨の言葉で喋ることが出来たらどんなに豊かな人生であろうかと思わなくもない。俄か雨は、春雨は、秋雨は、驟雨は、長雨は、どんな言葉を話すのだろうか。