武藤義哉『春の幾何学』(ながらみ書房、2022年)
「ピーちゃん」というセキセイインコである。歌集のはじめのほうに、この家にやってきて住むことになったいきさつがうたわれている。
ピーちゃんがピーちゃんと言うピーちゃんは自らの名とたぶん知らずに
まわりが「ピーちゃん」「ピーちゃん」と呼ぶのを真似して、インコのがわも「ピーちゃん」「ピーちゃん」とくりかえす。そういう風景が、かつてあった。
人に限らず、死というものは案のほかあっけない、という場面がある。「飛び方が変」だなあとおもっていた朝方、やがてインコが死ぬとはおもいもしなかった。
死というと、いかにも死にそうな激しいものを想像するが、昨日まであんなに元気だったのに、という人が次の日とつぜん死んだりする。おもいかえせば、あれもこれも予兆のようにうつるのだが、しかしどれもこれも、そのときには死につながるとはおもいもしないことなのだ。
「飛び方が変」という把握は、この歌集におおく見られるあるユーモアさえ含みながら、その余裕が妙に生々しく、このあっけなさがいよいよ胸に迫る。
