『うすがみの銀河』鈴木加成太
雪という自然現象は、なにか荘厳さや郷愁や、異世界のようなものを誰の心にも感じさせるのではないだろうか。この歌では雪は「魔方陣に呼ばれて」降ってくるという。
「魔方陣」と聞くと、わたしがまず思い出すのは水木しげるの漫画「悪魔くん」に出て来る魔方陣である。地上に大きく不思可議な図形と文字を描き、エロイム エッサイムと唱えながらその周りを廻って、見えない世界から魔力を呼び出すのだ。この歌の「少年」も、そんな空想を楽しんだのではないだろうか。「少年」が地面に「描きさし」た「魔方陣」に応えるように雪が降り出す。そんな「町」がわたしにはひどく懐かしい。古来から幾たびも歌われてきた「雪」という自然現象は、この歌の「少年の描きさしの魔方陣」という言葉によって、さらに新たな異世界へと誘っている。