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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
カテゴリー:
一首鑑賞
蟬脱のさまに飛行機の或部分ひらきしづかに車輪のいづるを
今夜どしゃぶりは屋根など突きぬけて俺の背中ではじけるべきだ
ドアを出づ、―― 秋風の街へ、 ぱつと開けたる巨人の口に飛び入るごとく。
涅槃図の鳥獣のごと野に立てばまた逃げ水の父あらはるる
逢ふといふはこの世の時間 水の上を二つの星の光(かげ)うごくなり
全うするとはいかなることかくれがたの防火バケツに降り込むみぞれ
身ごもりし娘と自転車を押してゆく祖師ヶ谷大蔵処々梅花盈(み)つ
木の影の塀をつたひてくる夕べ自転車を押すは吾が父ならん
わたしの自転車だけ倒れてるのに似てたあなたを抱き起こす海のそこ
テーブルを挟んでふたり釣り糸を垂らす湖底は冷たいだろう
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