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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
大松 達知
祈りとうことを久しくせざるかなせめて机上の土鈴を振らむ
停車場(ていしゃば)に札(ふだ)を買ふとき白銀(しろがね)の貨(かね)のひゞきの涼しき夜なり
リモコンが見当たらなくて本体のボタンを押しに寝返りを打つ
発言は波立つような反感をみちびきたれど反論はなし
北の壁に一枚の肖像かけており彼の血をみな頒かちつつ老ゆ
ああさうだこの声だつたと思ふためそのためだけに君と会話す
「あれ、まさか」前の背に浮くおとろえに粛然として焼香に並む
寂しさに海を覗けばあはれあはれ章魚(たこ)逃げてゆく真昼の光
喫茶より夏を見やれば木の札は「準備中」とふ面をむけをり
父を支へて歩めば老人のにほひせり不機嫌に垂るる時間の匂ひ
夜半すぎてこころのしまりくるときのこの真顔(まがほ)ひとりわれのみぞ知る
ことばもて君をのぞけば月蝕のにおいのような遠いくらがり
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