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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
井上 法子
ボールペンが落ちても鞄をひらいてもすべての音が十月である
還らないひとを探してひまわり畑を歩いた。何日も何日も
酒粕に鰆ふた切れ漬け込みたりうふふに過ぎる〈待つ〉とふ時間
潮のおと耳より心に入れながら脱にんげんの一瞬もある
冒険に着ていく服が闇夜には燃やしたように思い出せない
春がすみいよよ濃くなるまひるまのなにも見えねば大和とおもへ
言わないで火を点けないでまなうらに金平糖のなだらかな棘
緑道の暗渠に流れゆく水に息をあわせて あわせて ねむる
風鈴がふるえる九月生きてゆくための思想に上書きはなく
わが生にかかる耀きのなかりしを思ひつつ見る今年のもみぢ
台風が逸れたらしいというニュース逸れた先にも住むひとはいて
津波のやうに流行り病のやうにといふ比喩ひえびえと近寄りがたく
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