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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
吉野 裕之
印章を売る店すぎてわれと子は思い思いの夕焼けに遭う
新宿駅西口コインロッカーの中のひとつは海の音する
玄関にセールスマンが立ちしときたちまち対する外部と内部
妻は妻のかなしみをもて家中に花かざりゆく雨の日曜日
みどりごは鳥の形態(かたち)に腕ひろげ飛ぶと見えしがねむりゆくなり
坂の上に桜揺れおりうっすらと眠りが坂よりおりてくるなり
午後三時県境に雲影(エコー)あらはれて丹波太郎はいま生まれたる
前よりはきたらず後より追いついて追い越されゆく齢とおもう
枯れ色にもう抗わぬ冬の街に赤信号は明滅しおり
淋しさは壊してしまえ生牡蠣(なまがき)に檸檬をしぼるその力もて
陸橋に棄てられてゐる虹色の買物袋風はらみをり
拾ひたる落葉は星にかくも似て一つの旅をわれは終へたり
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