2015年03月のアーカイブ

海ふかく沈める艦がかぎりなき潮のながれに音ひびくとぞ

震災より百日過ぎてようやくにミネラルウォーターのCM流る

思惟像のあてどなき掌のかなしみよ春を含みて雨流れたり

つなぐほどさみしいはるのゆびさきをそれでもかさねあって、みずいろ

おおおおお、お前は見たか百房のみのれる丘の公開処刑

「おぼろ月夜」小声で誰と歌ひしか昼は絵の具のいろの菜の花 

戦力外と宣告するのは紺いろのスーツの男 お前は俺だ

停車せるドアより入れるうぐいすの一声乗せて列車動けり

老いづける歌の友らと白き酒飲みてほのぼのと語ることあり

さよならの練習 春になりかけの空の白さにただ手を伸ばす

家の具みなはこび去りたる此家にしまらく我は立ちて思へり

多忙の中届けくれたる娘の煮物かすかに焦げし香のまつはりて

フェイクファーかすめた指にしみついて恋はいつでも冬の匂いだ

奔馬なる地球に棲みてわれら百年に満たぬ短き生を終ふるか

店頭に並ぶ無眼の目刺にもどどっと春の怒濤が甦る

被災の子の卒業の誓ひ聞くわれは役に立たざる涙流さず

犬の事情わたしの事情ゆうづつを仰ぐかたちで枯れ草蹴りぬ

あまたなる死を見しひとと見ざりしひとと時の経つほど引き裂かれゆく

黒々としげる樹海の遥けきにパンケトー・ペンケトー二つ湖

杉の木が吐息を吐けり春うらら関東平野はくしゃみに震え

百八まで卿らは生きよ吾は間なく終らむといふ火酒また呷り   

なぜ我はひと恋ふるたび春泥のもつとも深きところをめざす

篁の奥に静かに湧く水の傷みを思う眠らんとして

刻みたる大根に振る粗塩に春の大地の水は寄り来る

みずうみを撃ちたるあとの猟銃を寝室におき眠る少女は

大和物語百四十七段死ぬことはないだろうに、女

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