2018年05月のアーカイブ

ほととぎす喧(やかま)しきまで鳴きつのる山の校舎やマル読みの声

終電のゆきたるのちの柿生駅灯りて駅の風格保つ

すぐにもどるつもりの軽きよそほひに街上を過ぎ野の歩みなり

切り傷の乾ききらずに夏来たり交差点の百合はあたらし

おのづから井戸のくづるる 黙せよと言はるるまでもなく黙しきて

どうしようもないことだけでできているアネモネだから夜を壊そう

朝雁よ つがひを群れを得て我はあまたの火事の上を飛びたし

堤防に続く景色に追いつかれそうでしずかに手袋はずす

蛍橋けふも渡つて買ひにゆくJAあをばの葉付にんじん

シャンプーのきみのあたまの泡のまにあたしの家があったがながした

火鉢に火 灰皿に灰 花瓶に花 あなたはどんな手をしてるのか

ゆるやかな心変わりで幽霊に会えなくなった八月のこれから

スズカケと肌が似ていてスズカケじゃない並木道 木を見て歩く

空白の原稿用紙ひとマスは注射のあとにはりつけたまま

ボンネットに貼りつく無数の虫の死が星座のように広がっている

八月の蟻がどんなに強そうに見えるとしてもそれは光だ

奇跡などなにひとつ起こらざりしかな風に若葉が日がなかがやく

ホームとの隙間が大きな駅に住むあなたの家を訪ねていった

腕時計ひかりをかへしいつのまにか半袖ばかり着てをれば初夏

兜虫の背中おさへたる虫ピンを写して明るき昭和の図鑑

あなたへとつづく明るき階段の真ん中ばかりすりへつてゐる

坂道を上った先の消防の間口の広い建物に塔

口内炎舐めつつエレヴェーター待てり次の会議に身を移すべく

CASAからわたしの部屋のベランダに干した真っ赤な布団が見える

コスモスが咲いているのは母校なる小学校の脇の道なり

リバーシブル! 正義の味方のやうな声発してきみは服うらがへす

蠟燭に火は慄えつつ リア失冠の間にも控えていたはずの燦

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