2022年9月 – ページ 2 – 砂子屋書房一首鑑賞

わが生にかかる耀きのなかりしを思ひつつ見る今年のもみぢ

福島から来ましたと新しい街で言ふだらうまだ寒い春の日に

台風が逸れたらしいというニュース逸れた先にも住むひとはいて

「出来ないことがあったら電話して頼みなさい」西部ガスはた九州電力

津波のやうに流行り病のやうにといふ比喩ひえびえと近寄りがたく

雪はまず車のうえに積もりだす　車のうえにしずかに雪は

人界に巣をつくりたるせっかちな山鳩こんなにさびしい聲で

逃げてたら余計に怖くなるからな　青天に薄い雲ばかり浮く

問わざるに海岸線へ目を移しあはは、あははは　屈託もなし

たつぷりと牡蠣の旨味をふふみたる土鍋の底の葱をたのしむ