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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
カテゴリー:
一首鑑賞
さびしさは父のものなり水底(みなそこ)の泥擦り上げて真鯉浮かび来
春の日を家居せりけり擦れ違ふ人なくて曇りゆくわが面(おもて)
降りみだれみぎはに氷る雪よりも中空にてぞわれは消ぬべき
右半盲の母の視界の外に立ちミモザの花はあふれて咲けり
遠空に音なき雷が瞬きて人ひとり娶らんおののきを持つ
会えなくていいような気になりかけて春の枯れ葉にさし入れる足
婚姻のつめたくひかる虹のため足らざる色を持ち寄りにけり
ヒヤシンスの根の伸びゆくをみつめいる直線だけで書ける「正直」
釉薬を身体(からだ)に巻きて佇つごとし近づくわれをかすか怖れて
杉花粉に荒るるのどより朝まだき美しきあかき痰は出づるも
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