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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
吉野 裕之
匂ひ鋭(と)く熟(う)るる果実をわが割(さ)くをまどろみのなか夢に見てゐつ
蜂蜜にカリンの輪切り五つ六つ浮かせて風邪を待つごとくゐる
吊り橋と吊り橋をゆく人々の影うつしゐる秋の川底
たぶの樹を見に行つたらしい 暮れがたの二階の気配失せてしばらく
梢(うれ)たかく辛夷の花芽ひかり放ちまだ見ぬ乳房われは恋ふるも
忘られし帽子のごとく置かれあり畳の上の晩夏のひかり
床屋よりもどりて夕刊読む夫のにわかに齢(よわい)かたぶくうなじ
塀の上を過ぎゆく猫に見られつつストッキングに片足とほす
初心者の衒(てらい)にあらむこそこそとメガネのレンズふく昼さがり
百千体じぐざぐに並ぶ石仏のかたぶきしまま夜は眠らむか
地下街をキックボードで滑りゆくみずがね色の猫やなぎたち
一昔前のやうなる水村(すいそん)をバスより見をり旅にあらねど
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