2009年05月のアーカイブ

誰のこともさして恋はずに作りたる恋歌に似て真夏のうがい

蛍の谷見よと言いし人再びを見しかと問いて誘いはせず

螢(ほうたる)よどうすればいい 病む汝を取り戻すべくわれは点らむ

もうあまり会わなくなったきみの傘も濡らしてますか今日の夕立

君一人置きしベンチに近づきて横顔はかくも侵し難かり

カナリアの羽ぬけかはる夏となりとまり木の上にひと日黙せり

十五年借りたるのちは返すべきさみどりの長身月映に置く

あるときは泣きたきほどに百合蕊の粉に塗れて戻る道なり

数ならぬふせ屋におふる名の憂さにあるにもあらず消ゆる帚木

わかるとこに/かぎおいといて/ ゆめですか//わたしはわたし/あなたのものだ

朝顔の絶えることなく咲きだして誰のものにもなれない弱さ

内に飼い慣らす怪物 哄笑とともに若葉を吹くこの街で

男女とは一対にしてはるかなる時間差で置く白き歯ブラシ 

生ひ出てそこを動かぬ木草らのもの思ふ日暮れ白き十薬

一歳のむすめと乗りて鞦韆(しうせん)の果てざるひびきふるへつつ聴く

ひと日樹をしきりにゆすりなにごとか問ひゐし風もいつしか去りぬ

おとうとが喪服持たざる心配を息ぎれしつつ母は言うなり

誰が決めし「母の日」というおろかさにワインがとどき日傘が届く

無理をしてほしいと言えば会いにくる深夜かなしく薔薇を抱えて

勝ち負けの淡くなりゆくわが生か 水木の花もいつしか終わる

パン選ぶ君のすがたを玻璃越しに見つめるときのわれは行人

交わってきたわたくしを抱くあなた キャベツのようにしんと黙って

あたまでは完璧にきみが描けるからときどきわたしは目を閉じている

男(お)の子とは空を漂ふ鯉のぼりコントラ・ヴェンテにわが身曝して

しらさぎが春の泥から脚を抜くしずかな力に別れゆきたり

偶然を恃むことすでになくなりてゆきずりの店にスィートピー購(か)ふ

月別アーカイブ


著者別アーカイブ