2015年08月のアーカイブ

野菜たち官能的な蕊匂わせ生殖している夏の菜園

廃村につづく坂道グーグルにおおかた消えしにっぽんの道

英霊の生きてかへるがありといふ子の骨壺よ振れば音する

吹きあげてこもれる風にしばしばを大樹のごとくふくらむが見ゆ

玉砕の父の短き人生に恩給というつぐないきたる

十代の自分を恋えりローリング・ストーンズ聞いて幸せだった

筒型のMRIに万歳のかたちにありて想ふ回天

まひまひは負ふ家さへも涼しげに海鳴りきこゆる石塀をゆく

兵隊サンの妻でも母でもない幸福を時々忘れてしまふ さくらよ

蛇臭き雨空なれど君は言はず蒸暑く光る泥道急ぐ

そのまま行かば危き道なりと知りつつ来たりまさに到りぬ

こんなにも広くて大きな腕がほし明石海峡大橋は父

八月の耳はとがれりバケツ打つ雨音しきりにポツダムポツダム

すぎさつた時間のなかに和服着るすずめが居りてときをり踊る

「父を夫を英霊と呼ぶな」プラカード高く掲ぐる敗戦記念日

潮曇るむかうの島をねむらせてまひるまの空に游ぶアヂサシ

ペルセウス流星群にのってくるあれは八月の精霊(しょうりょう)たちです

きたぐにの夏空白く抉り取りグライダーわが頭上飛び越ゆ

真夏、還つて来たのは小さな石だつた。小石のままの母のおとうと  

本を焚き詩人を焼いてしまつたら、爽やかだらう。(都市の)明日も 

二十九歳父の軍服は夏のまま七十回目の八月迎ふ  

あけつぱなしの手は寂しくてならぬ。青空よ、沁み込め

大空のホールにみえざる群衆の椅子をひく音夏の雷鳴  

たなぞこの上にのせたる見もあかぬ金剛石よ国の気は寄る

夏帽子振るこどもらよ遺影なる伯父とことはに戦闘帽かぶる  

夏山の嶺かさなりてうちつづくみづうみべりに妻子らとゐる

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