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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
前田 康子
眼と心をひとすじつなぐ道があり夕鵙(ゆうもず)などもそこを通りぬ
いつにても顔の高さに海音のありて明るし寂し療園
この町の見知らぬ人と一本の大根の上下分け合ひ暮らす
まるまるとまるめまるめよわが心まん丸丸く丸くまん丸
生きて来てふっと笑いぬ今正午百合ケ丘は坂ばかりある町
灰色の蛇腹が延びて搭乗を待つ旅客機の腰にふれたり
ハンカチを泪のために使ふことなくなりて小さき菓子など包む
現役を退(ひ)いていながら役職の順につづきぬ焼香の列
消火器の肩のあたりを拭きながらいつしかわれの肩と思いぬ
ふうふうと父ふくらますならねどもふうふうとその手をあたたむる
腕時計を見る癖が出来真夜中の湯船の中で左手を見る
われに似るさが持つ者をはぐくめる妻をひそかに懀みゐるなり
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