コンテンツへスキップ
砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
澤村 斉美
『夜と霧』つめたきこころのままに読みときどきおほき黄の付箋貼る
山に来て二十日経ぬれどあたたかく我をば抱く一樹だになし
手套にさしいれてをりDebussyの半音に触れて生のままのゆび
啄木の日記の上に目覚むれば干し草ほどに乾ける活字
切株の裂け目に蟻の入りゆきて言葉以前の闇ふかきかな
きつとある後半生のいつの日かサヨナラゲームのやうなひと日が
ウオッカといふ牝馬快走その夜のわたしの肌のやすらかな冷え
フランスの語彙を学べるわが上にああ月(リュヌ)といふ此岸の出口
故郷近くなりて潰せるビール缶の麒麟のまなこ海を見るべし
ぼそぼそとももいろの塊(かい)食べながらハムも豚だと思い出したり
秋光のいまなにごとか蜘蛛の巣に勃(お)こるまでわが視野の澄むべし
夕かぜのさむきひびきにおもふかな伊万里の皿の藍いろの人
投稿ナビゲーション
前のページ
固定ページ
1
固定ページ
2
固定ページ
3
固定ページ
4
…
固定ページ
13
次のページ