2017年10月のアーカイブ

ふと思ふ我を見守るあたたかき心に気附かず過ぎしことあらむ

嘘ではない、嘘ではないがどこまでも滑らかである彼の言葉は

台風の母は海なればゆりかごは大きく大きくそして濃き青

夜のでんしやに「もうだめだな」といふ人あり雨の言葉のやうに沁みくる

コスモスがもつれて咲いている駅にしゃがめば澱む夕影の中

ベランダの手摺りに砂の残りいる会わぬと決めし人の掌のごと

秋明菊のひとつの花をめぐり飛び去りて行きたるしじみ蝶ひとつ

<先に行く PM3:00> かかわりのない伝言の前を過ぎてく

降ってきたよと言いながら窓を閉めてゆく 急に二人の部屋になりゆく

こうやって母もぼんやり眺めてたやかんの湯気が激しく沸つを

蒼しずむの山の肌黄葉もみじばは身をせめぐごと澄みて華やぐ

「ナイス提案!」「ナイス提案!」うす闇に叫ぶわたしを妻が揺さぶる

風鈴の垂れてしづけし戦争に移らん時の静けさに似て

最上階のラウンジからの東京を宝石箱と呼んでいた頃

親にスマホもPSPも取られて良かった自由ですと日誌にあり

さようなら昼のアイロンこの家はもっと軽くていいはずだから

遠くまで行った夢だよ トーストを焼いて渡して連れ合いに言う

先生が指さすものをドイツ語で、いす、りんご、カーテン、これは、風

馬上とはあきかぜを聴く高さなりパドックをゆるく行く馬と人

みなと風 吊り広告を取り替えるひとの眼鏡に虹は映れり

無花果の果実ざくりと開かれて雨の市場に身をさらしをり

真夜中の電話口にて君に言う「死にたい」以外は全部嘘です

波がしら一つに寄せて立ちあがり暗き濁りの岸にとどろく

いましねばこれが遺影に使われる瞳にひかりがひしめくプリクラ

名残思ふまくらに残る虫の音はゆめの跡とふ心地こそすれ

林檎ほどの火にてポットを温めつきみの聴けざるきみの寝言よ

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