2018年08月のアーカイブ

イエスは三十四にて果てにき乾葡萄噛みつつ苦くおもふその年齒(とし)

短足を櫂として漕ぐ水中の河馬の軽さよ尻尾も短い

マルボロをふかせる君に肺といふ逆さの桜いま咲きほこる

わたくしを生きているのは誰だろう日々わずかずつ遅れる時計

またひとつピアスの穴をやがて聞くミック・ジャガーの訃報のために

洗濯機回る音すらうたた寝に母在りし日の音とし聞こゆ

ママのバラの服のうしろにへびがいた/最近ゆめみのわるいここは

歩数ゼロの携帯にメール、またメールわたしは今日はじつとしてます

雄叫びに似て冬の陽が落ちてゆくしばし炎の髪となる森

噴水を創りし人のはるかなる水きららかに巡りてゐたり

自販機を見つけるまでは話さない獣みたいな食事のあとで

きちんと育てられたんやねと君は言ふ私の闇に触れてゐるのに

草木は怒りもたねば怒りたる人は紅葉のなかに入りゆく

鏡台の位置を変えれば意外なる明るき光の中に貌あり

山に来てほのかにおもふたそがれの街(まち)にのこせしわが靴(くつ)の音(おと)

死ぬまえになにが食べたい? おにぎりと言おうとしたら海が開けて

園芸用ポールは肋のごとく立ちそこより出でず茘枝(ゴーヤ)の繁る

地に近く黄の色を曳く蝶々よおまえがたてるものおとあらず

うれしいの わたしもうれしいゆふやけが夏の水面をまたたかせると

水は青く、ないと言ひ掛けザラザラのプールサイドに膝抱へゐき

屋外は現在、屋内は未来、中庭は過去、につながりて夜の秋

みづからの空虚にながくくるしみし年月を仮に青春と呼ぶ

耳よりも大きいキティのストラップ揺れて少女は突然泣いた

昼食(ひる)ひとり済ませぬとほき球場の高校生を画面に見つつ

ふだん喋る機会のない人からペンを借りおめでとうと書いて返した

庭の花グラスに挿してながめをり昼寝のあとは散歩に出でむ

みぞれ みぞれ みずから鳥を吐く夜にひとときの祭りがおとずれる

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