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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
月:
2019年10月
吉野昌夫/神宮競技場ここ聖域にして送らるる学徒幾万に雨ふり注ぐ
嵯峨直樹/ベビーカー向こうの闇より現れて赤子の手足細かく揺れる
和嶋勝利/謝罪ならいらぬとなれば出る幕もなく出るとこに出ることとなる
大森静佳/かわるがわる松ぼっくりを蹴りながらきみとこの世を横切ってゆく
細川謙三/敗戦の頃の日本を語るのみ老いし感傷を避け来て坐る
大森静佳/顔の奥になにかが灯っているひとだ風に破れた駅舎のように
神山卓也/守るべきはヤマか雇用かと自問しつつ金貸して来し矛盾も終はる
大森静佳/馬の腹に手を押しあてる少しだけ馬の裡なる滝を暗くして
中野菊夫/妻が植ゑし大切な葱をぬきてきぬこの幼子らかくて育ちゆけ
岡井隆/記憶違ひはさう想ひたい欲念の素顔でもある 秋の風吹く
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