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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
澤村 斉美
夜の更くるお茶の水橋の下びには人面(じんめん)なして葛の葉が吹く
ひるがほのかなたから来る風鳴りが銀の車輛となる夏の駅
底ごもる地下鉄の音過ぎゆくを跨ぎて暗しわれの家路は
横にいてこうして座っているだけで輪唱をするあまた素粒子
哲学を卒(を)へしこころの青々と五月、机上に風ふきわたる
どこへも届かぬ言葉のやうに自転車は夏の反射の中にまぎれつ
この母に置いてゆかれるこの世にはそろりそろりと鳶尾(いちはつ)が咲く
初夏の陽に青みてうかぶ種痘あとわれをつくりし父母かなし
遠くに立っていただいたのはよく視たいからだったのに しずかな径で
君思ひ窓によりつつ牛乳(ちゝ)を飲むうすあたたかき日光を吸ふ
母性とふ地下水脈のみつからぬ身体にまぼろしのリュート抱きしむ
門扉までのタイルに溜る雨みずにそそぎてゆるき春の雨脚
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