Archive for the '今日の一首鑑賞' category

ちる花はかずかぎりなしことごとく光をひきて谷にゆくかも

新姓を貼り付けられて生き延びるこのベランダは終着点なり

今宵、月にシルバーベッドの影が見え老いたる鶴がひとりづつ臥す

「自由を謳歌」ってひとりぐらしのトイレにも鍵かけているわたくしが、か

浅草の地下に溜れる浮浪児を父の肩より見しを忘れず

恋愛にはるかに遠き関係として呼び出されたること多し

靴音となり人のゆく地下道の靴音の群へわれも降りゆく

ひと憎むことほど易きことはなく松の針ふる下を歩めり

リストラというよりかつての日本語は端的率直馘首と記す

食ひ終へて食ひ飽かぬとぞわが母のわれを憎しむ目に力あり

眼にふれて時にひかるは春の日に蜘蛛の糸など飛ぶにかあるらし

生涯憎み続けるといふ一言をむしろなぐさめとして覚めをり

原発が来りて富めるわが町に心貧しくなりたる多し

すがれゆくパルテノン多摩若すぎて憎まれるうちに教授になりたい

流されて家なき人も弔ひに来りて旧の住所を書けり

あさかげの今井美樹的東京を数度(すたび)おとなひ数たび憎みき

苦しいと思えば呼吸を思い出す/苦しいと思えば浪江を思い出す

聡きことわづかに憎し主もたぬ犬さへひとを嗅ぎわけて寄る

被災せし人は誰も見ず 鳥瞰的津波映像を見るはわれらのみにて

しどけなく電車に眠る少年の微かにひらくくちびる憎し

若狭より水を送りて大和にて汲みあげている春の仕来り

愛告げてのちの夕映え 理科室に聞きくれし友を憎みはじめぬ

はまぐりの汁澄みとおる雛の夜に俄かに母の老いふかみゆく

わが(ひげ)
下向く(くせ)がいきどほろし
このごろ(にく)き男に似たれば

薄墨のひひなの眉に息づきのやうな憂ひと春と漂ふ

夜の公園にポケモン探せと奨励せしこの世あまりに小さき日本

雨の日はももいろの傘さしてゆく幾千のももの桃色のあめ

親にスマホもPSPも取られて良かった自由ですと日誌にあり

湯に入れば湯殿に母はつき来り我が背を撫でて泣きたまふなり

裾上げを待つ ストIIのデモ音がやけに響いているゲーセンで

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