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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
黒瀬 珂瀾
思ひ屈してゐたるわが身は立ち上り食ととのへむ籠さげて出づ
残党を狩るごとく口腔内のフォワグラ舌で拭ひたりけり
干し網は白く芝生にうたれつつ輝く時のいまは過ぎゆく
しづけさは座卓のしたのゆふぐれの猫のぬくもり右腿に添ふ
蒲団より片手を出して苦しみを表現しておれば母に踏まれつ
こんなにも赤いものかと昇る日を両手に受けて嗅いでみた
口にしないすべてのことを受けとめるようにシチューが並ぶ食卓
知る人ぞ知る体温として残れかし辞書への赤字を日々に重ねて
山岸に、昼を 地(ヂ)虫の鳴き満ちて、このしづけさに 身はつかれたり
泡立てて体擦(す)りつつほとほとに飽けりからだは鍋より大き
歪形(わいけい)歯車の かんまんなきざみの意志たちの冷静なかみあいの、──この地球のこのおもいおもい午後
いつのとき遂げんひそかなる冬の旅花しげき三椏を幻として
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