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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
黒瀬 珂瀾
だきしめてやりたき肩が雑踏にまぎれむとして帆のごとく見ゆ
〈弧(ゆみ)をひくヘラクレス〉はも耐えてをり縫ひ目をもたぬひかりのおもさ
帝王のかく閑(しづ)かなる怒りもて割く新月の香のたちばなを
こひねがい潰(つひ)えたる夜を黙しゐて子の万華鏡のさまざま覗く
傷あらぬ葩(はなびら)のごとかばはるるうらがなしさに妊(みごも)りてをり
てのひらに稚きトマトはにほひつつ一切のものわれに距離もつ
寄り弁をやさしく直す箸 きみは何でもできるのにここにいる
泣き濡れてジャミラのように溶けてゆく母を見ていた十五歳(じゅうご)の夜に
たまり水が天へかへりてかわきたるでこぼこの野のやうにさみしい
叫喚(さけび)上ぐ高層ビルの解体の瞬時逃げおくれしたましひが
体には傷の残らぬ恋終わるノンシュガーレスガム噛みながら
死者の魂(こん)翼に乗ると空みつつまなこ澄みけむ古へびとら
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