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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
月:
2016年6月
ビル街のよぞらに雨後の月あかしむかし御油[ごゆ]より出でし夏の月
ぷつぷつと突起のありてオルゴール春の夕べはひときはやさし
せめて冀求[こひねが]ふ――――。見事に霽れた朝[あさ]、バッハを聴きながら死ぬことを
原色の傘を差す子よ おまへとはまだ混じるべき色もたぬ生
問診の〈正しさ〉ゆゑに妊娠と出産回数さらりと問ひ来[く]
悲しめる暇(いとま)あらぬを許したまへ父の遺影をけさは浄むる
錦玉糖ふたつ買いおく雨間[あまあい]の誰も来ないかもしれぬ土曜日
〈神経は死んでいます〉と歯科医師は告げたりわれの初めての死を
昼の視力まぶしむしばし 紫陽花の球に白き嬰児ゐる
セーラー服の身を折り曲げて笑ひあふ少女の時間あをき風ふく
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