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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
魚村 晋太郎
さくら咲くゆふべの空のみづいろのくらくなるまで人をおもへり
いつか僕も文字だけになる その文字のなかに川あり草濡らす川
何回も桜並木を迂回する告白を待つ少女のように
仕方なく雲からこぼれて来たような雨いつかやみ春の夕暮
香りたつ栄螺の腸を巻きとりてふつと誰かを許したくなる
鳥の重みに揺れてゐる枝 どのやうに苦しむべきかわれはわからず
ブラスバンドが同じところで間違ふを二人聞きをり春の三角州(デルタ)で
安心といふのはかういふものだらうひとつの花にひとつのめしべ
湯の中に塩振りながら ブロッコリーお前程いさぎよき緑になれたら
春の日を家居せりけり擦れ違ふ人なくて曇りゆくわが面(おもて)
右半盲の母の視界の外に立ちミモザの花はあふれて咲けり
会えなくていいような気になりかけて春の枯れ葉にさし入れる足
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