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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
佐藤 弓生
あおむけに書けばかすれてゆくペンのちいさなちいさなボールをおもう
氷[ひ]の熱は氷室に満てりみまかるとみごもるの語のふしぎな相似
足を引く老[おい]が乗り込む夕暮のバス停に光の函[はこ]を見送る
新学期はじまりおわりミニチュアの銀の複葉機をもらう夢
昔話の途中で寝入りし子の側で思う「めでたしめでたし」の先
げんげ草一[ひと]とこいたく伏してあり若者たちの角力[すもう]とりしあと
現状を打破しなきゃって妹がおれにひきあわせる髭の人
母はよく讃美歌を唱ひしが〈ここはお国を何百里〉などもうたひぬ
髪を耳に挟めばひそと耳の冷えふくらみながら海月の寄り来
満席を告げつつ椅子がないことがあなたの夜の深さだろうか
曇天に火照った胸をひらきつつ水鳥はゆくあなたの死後へ
墨壺ゆ引き上ぐるとき筆先は暗黒宇宙を一滴落す
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