都築 直子のアーカイブ

黄昏は雲より水へ溶けゆきてそのままうたふ川となりたり

まつぼくりきのうひろってきょうひらきいえあだだかいゆぎもまんがい

気が付いた時にはすでにしやべつてた日本語だから気付かなかつた

影絵より影をはずししうつしみはひかり籠れる紙に向きあう

うなだれてゐたるうばらが水上げて勢ひづいたりしやきつとしたり

採光窓歩道に開けば地階よりの光漏れ来ぬわが足もとに

行つてはだめよと言へばいつせいにふりかへるしづかな老人しづかな子供

あなたとふ管の湿りをのせてくるこゑに纏はり恋ふ人われは

すすみゆく時にあふともいそのかみふるきてぶりをわすれざらなむ

要するに世界がこはい 夕立に気がついたなら僕に入れてよ

子供より親が大事、と思ひたい。子供よりも、その親のはうが弱いのだ。

佐々木ならず佐佐木なることだいじにてその後我は誤たずけり

雨荒く降り来し夜更酔い果てて寝んとす友よ明日あらば明日

片脚のなき鳩ありて脚のなきことを思わぬごとく歩きぬ 

手の甲に浮く老斑の濃く淡くひと恋いしこと長く忘れず

傾けむ国ある人ぞ妬ましく姫帝によ柑子差し上ぐ

リタイヤ官吏背広着てカツカレー喰ふ憲政記念館食堂のあどけなき昼

うみ おちて つち に ながるる かき の み の ただれて あかき こころ かなし も

われに向ひて光る星あれ冬到る街に天文年鑑を買ふ

百枚のまぶたつぎつぎ閉じられてもう耳だけの町となりたり

ソヴェートの韻律はかくも新しくわれらのクラスに没日反射す

熱き息頬に触るるかと思ふまで近づかしめて射ちはなちたり

マシーンの赤きが光引きてゆく地上を愛すこの一瞬を

満月はかさぶたみたいな色をして(あれが地球の影なんだね)

上海は雨けふも雨、午後四時の気象通報おもひだしてる

眼鏡橋の眼鏡の中から眺むれば柳一本風にゆらるる風にゆらるる

10月31日休載します

新しき瞬間がありネオンサイン必ず消えてまた灯るとき

眼鏡屋は夕ぐれのため千枚のレンズをみがく(わたしはここだ)

箸かろく蕎麦つまみ上げ先をふと撫づるがごとく即すすりたり

1 / 612345...最後 »

月別アーカイブ


著者別アーカイブ