2017年05月のアーカイブ

ヴェランダは散らかっていて六月の台風がもうじきやってくる

空の奥へ空が続いてゆく深さ父となる日の土管に座る

すずやかな空の青さで顔を洗う心地のあした七月となる

親馬に添ひて野を来る仔馬見ゆ親はかなしきものにかもあらむ

波とほく寄する耳鳴り 八月の雲が厚みを増してゆくとき

亡き人を語りて書きてそののちにもつと本当のことを思ひ出す

天からのサインが風に溶けてゐて諦めよといふ九月の朝に

片耳をそっとはなした電話から鎖のように声はこぼれる

十月の孟宗竹よそうですか空はそんなに冷えていますか

吉野にはあの世この世を縫ひあはす針目のやうな蝶の道あり

水薬の表面張力ゆれやまず空に電線鳴る十一月

なかぞらのすきまに見えて赤き實の三つ野鳥ののみどへ行けり

灰色の空見上げればゆらゆらと死んだ眼に似た十二月の雪

自動エレベーターのボタン押す手がふと迷ふ真実ゆきたき階などあらず

舞い上がるぺらぺらな紙このままで十三月の空に死にたし

わが脚が一本草むらに千切れてゐるなど嫌だと思ひつつ線路を歩く

あおあおと一月の空澄めるとき幻の凧なか空に浮く

すべからく落つるべき子が落ちしかな大田区池上むかしの肥溜め

約束をつんと破ってみたくなる二月の空にもりあがる月

呼ぶ声の水にひびかひ草むらにもう一人ゐて少年のこゑ

しみじみと三月の空ははれあがりもしもし山崎方代ですが

白つつじゆたかに昼の日は射して蝶、蝶を追ひ人、人と行く

捨て猫の瞳の底に銀の砂 四月の雨はふいに降りやむ

そうですか 怒鳴り続ける声があり頷きながら思う白鷺

五月の樹をゆるがせて風来たるのち芯までわれを濡らす雨あれ

戦争を知らぬ世代が老いてゆく不安なタンポポ空ばかり見て

小道さへ名前をもてるこの国で昨日も今日も我は呼ばれず

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