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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
前田 康子
月面に咲くかも知れずと思ふほど月光に蕎麦の花が照りゐる
七十にして砰(ずり)といふ文字を知りランドセル背負ふごとき嬉しさ
千両も万両もあかく実るなりわれから遠くわれは生きゐる
五種類の薬いつきに飲みたれば絵の具溶くごと胃の腑はあらむ
わが手より三歩駆け出し待っている自動改札茶色い切符
家族の背それぞれ違へど丁度よい高さがありてカレンダー吊す
人として生れたる偶然を思ひをり青竹そよぎゐる碧き空
店頭に積まれたゼリー透きとおり桃の欠片(かけら)を宙に浮かべる
母の顎に一本のひげが伸びてきぬをかしくもある老い極むるは
指先より冷え初むる朝ポケットの切符の稜(かど)の尖りたしかむ
子の学費払い終えたるビルの狭間篠懸の刈られいるを仰ぎつ
真鍮の分度器はつかに曇る朝母よあなたは子を見失う
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