コンテンツへスキップ
砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
前田 康子
ねこじやらし穂のふはふはを手握(たにぎ)ればぬくし秋陽を溜めたる穂先
四ツ橋筋に欄間屋ありてうつくしき欄間の彫りにひびく街音
朝くらき花屋の土間に包まれて仮死せるごとき白百合の束
馬鹿げたる考へがぐんぐん大きくなりキャベツなどが大きくなりゆくに似る
一口のパンが喉(のみど)を通った日私は真紅の薔薇になった
窓ちかく朝顔の苗うゑてまつ病みてゆけざる海のいろの花
ゆつくりと朝の机を拭き終へて場所が居場所に変はれる不思議
ブルーシートの青は食欲失くす色 三年を褪せることのなき色
両の手を垂れて液体のごとき吾か夜半に明るき小園にをり
子の夢に見られゐるわれ夕闇に螢ぶくろを提げてあゆめば
ひとりゐて魚焼きをれば魚の眼の爆ぜてこぼれぬしづかなる日よ
戦ひに敗れてここに日をへたりはじめて大き欠伸をなしぬ
投稿ナビゲーション
前のページ
固定ページ
1
…
固定ページ
4
固定ページ
5
固定ページ
6
…
固定ページ
13
次のページ