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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
黒瀬 珂瀾
うす青き朝の鏡にわが眉の包むにあまるかなしみのかげ
つまらなき世辞をさびしみ樹を下る一匹の蟻をわれは見ていき
背中から十字に裂ける蝉の殻 生きゆくは苦しむと同義
白桃の和毛(にこげ)ひかれり老いびとの食みあましたる夢のごとくに
なにとでも呼べる気持ちの寄せ植えにきみの名前の札をさしこむ
心強く生きがたきかな晩夏光輝く茄子の畑にゐたり
てのひらにつつむ胡桃の薄緑この惑星に子よ生れてくるしめ
地球規模で淋しいのですアボカドの茶色の種がなかなか取れず
殺したき男ぐらぐら煮てゆけば口あけて貝のごとき舌見ゆ
あやまちて野豚(のぶた)らのむれに入りてよりいつぴきの豚にまだ追はれゐる
ホイッスルに咎められつつ駆けぬけぬゼブラゾーンの水はねかへし
どうしても抜けぬ最後のディフェンスは塩の色した夏だとおもえ
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