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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
黒瀬 珂瀾
我の所掌となりし機密の書庫の鍵に赤く小さきリボン付け持つ
ゆふがほの解(ほぐ)れるときのうつつなるいたみはひとの指をともなふ
僕はいくつになっても夏を待っている 北蠅座というほろびた星座
灯台に風吹き雲は時追えりあこがれきしはこの海ならず
おみなにはなき愉しみに髭撫でて近代という男の時代
わたつみへ帰りてゆける道すがらワインとなりてわれに寄る水
稲妻が海を巨いなる皮として打ち鳴らしたる楽の一撃
「幽霊とは、夏の夜に散る病葉(わくらば)のことです」とその街路樹の病葉が言ふ
こないだは祠があったはずなのにないやと座りこむ青葉闇
うぬぼれていいよ わたしが踵までやわらかいのはあなたのためと
長き貨車だらんだらんと出て来たるトンネルのごと我が哭きおり
夜の暗渠みづおと涼しむらさきのあやめの記憶ある水の行く
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