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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
日高堯子
桜に雨 父はちいさな顔をして枕の上に目をひらきたり
かざし来し傘を畳みて今われはここより桜花の領界に入る
ほろほろと桜散れども玉葱はむつつりとしてもの言はずけり
焼け原のはてに かすかに浮かびゐし、幽鬼のごとき 富士を忘れず
ながらへて
八十
やそ
の命の花あかり。老い木の桜 風にさからふ
生まれきてかへりみるときてのひらに菫の花の重たかりけり
人が人を呼ぶ声高くさびしさの根源のように窓は開きぬ
菜の花の黄のかがやける丘にゐる老いらを訪ぬわれを待てれば
菜の花の
黄
きい
溢れたりゆふぐれの素焼の壺に処女のからだに
男をも灰の中より拾ひつる
釘
くぎ
のたぐひに思ひなすこと
三月はぬたといふ
食
じき
春泥によごるるごとき葱が甘くて
近づけば莢豌豆のハウスから雲雀飛び出しわれ囀れり
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