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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
門脇 篤史
風が苦しみ始めたやうだわたくしの深い疲労に気づいたらしい
齒の痛みにさらすぶざまはうつしみに恥多くとも生きて在るゆゑ
秋の夜はもの冷えやすし爪切りも鋏もひとをおもふ心も
捨てられるための資料を作ったら怒鳴られるための電話をかける
話す程に食ひ違ひ行くこの電話早く切らむと受話器持ち換ふ
栗を剝く人のうつむきあるときは知らずの奈落覗きつつ剝く
現実の迂回路であるこの坂に猫の死体がいつまでもある
もうダメだおれはこれから海へ行くそしてカモメを見る人になる
とりの
内臓
もつ
煮てゐてながき夕まぐれ淡き恋ゆゑ多く愉しむ
シャッターが全部下りてる夜の道に似てる打線を知っていますか
風鈴に指紋ありたり夏は疾く遠くなりゆく季節と思ふ
うつむきて髪洗ふときうつろなる背中をまるめ銀河にさらす
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