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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
吉野 裕之
歩みきて去年の団栗拾ひたりわづか濡れたる土の上より
ソックスを履かず冷えるにまかせたる指をはつ夏の陽に差し入れぬ
コロッケを肉屋に買ひて歩みつつ少年の日のよろこびを食ふ
追ひ抜かれ後退しゆくランナーをとらへをりしがやがて突き放す
まだ人のかたちをせるよ夜の駅の大き鏡の前よぎりゆく
わたくしも此処で死ねるか姑(はは)の死にしベッドを借りてお昼寝をする
病むわれは暗闇の中に立たされて壁泥(かべどろ)のごときものを飲まさる
ドアエンヂンなかば閉りて発車せしあはひゆさむき日が脚に射す
じりじりとセメントの袋担(にな)ふさま重心の移るさま見えてをり
きららかについばむ鳥の去りしあと長くかかりて水はしづまる
歳月に意味を問うなら問うことの問いの形がとり残さるる
雪をつむ喫泉の先へ伸びあがり口づくる子の足もとも雪
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