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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
大松 達知
山いもをすすりあげたる口もとと何の脈絡もなく塔がある
引伸ばせし寫眞の隅の卓のうへ黑きはきみの手袋と知りぬ
あ、ではなくああ、であろうか学校に踏み入るときの人の言葉は
水田に横転してゐる特急の写真を見ては和らぐこころ
ひとりゐて飯(いひ)くふわれは漬茄子(つけなす)を嚙むおとさへややさしくきこゆ
井戸のあり腕を伸ばせば水底に冷やしおきたる我のふるさと
山鳩はすがたの見えてわがまへに啼くなれど声はとほく聞こゆる
「雨だねぇ こんでんえいねんしざいほう何年だったか思い出せそう?」
おもらしの後は黙禱するやうに壁に向かいてうなだれる父
尖塔の建てられてよりこの街の空は果てなき広さとなりぬ
曇天のくもり聳ゆる大空に柘榴を割るは何んの力ぞ
「この国」と言ふときふつとさみしくて何かまとまらず春の宵
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