Archive for the '今日の一首鑑賞' category

囀りの声すでに刺すごとく森には森のゐたたまれなさ

雪に傘、あはれむやみにあかるくて生きて負ふ苦をわれはうたがふ

いにしへに恋ふる鳥かも弓弦葉ゆづるはのみ井の上より鳴き渡りゆく

さざなみの下はあかるき死の広場白き脊椎を曳きたる頭蓋

罌粟咲けば罌粟にあふるるおもひありてひと日陶器のごとく過ぐさむ

おうどんに舌を焼かれて復讐のうどん博士は海原をゆく

五十年使い慣れたるこの辞書のやぶれかぶれの我の老年

いななきて馬はめざめぬみすずかる信濃高原しなのたかはら雪真白なり

閉店のやさしい音楽が流れて、旅を勧めてくる雑誌を閉じる

「東京に生まれることも才能」と言いし人ありわれもしかおもう

まあそこに居つたらええよ、なんとなくほつと咲いてる木瓜とわたしと

はかなしな夢にゆめみしかげろふのそれもたえぬる中の契は

沼に沈む悲しき馬の嘶きを聞きてあわてて絵本を閉ぢる

新月はまだ宵ながららむとす星のひかりの空にさやけき

ゆらゆらとわれの寝覚めし朝焼けはほのおのようなダリヤのような

問十二、夜空の青を微分せよ。街の明りは無視してもよい

壁のそばに葉が揺れてゐる葉のうらに風が光つてゐる五月であるも

雪の辻ふけてぼうぼうともりくる老婆とわれといれかはるなり

てふてふが一匹東シナ海を渡りきてのち、一大音響

魂のふるさとの海あやかしのよそへる色の月明りかな

あした産む卵を持ったままで飛ぶ 燕は川面すれすれにとぶ

銀の燭かすかに吊し目覚めてはねては青き花食べにけり

キリストの生きをりし世を思はしめ無花果いちじくの葉に蠅が群れゐる

機関庫の春のさびしさ鳩さへも白きはね染むその炭塵に

時々、ひばりは空にのぼりゆき人間のすることを見るのです

刺青は沖に菫の色もてりはてしなく海にそそぐ雪片

ジャングルジムに少年たちがぎっしりと本を読んだりぶらさがったり

夏ははやいきいたづき苦しむかつがひたる蝶むなしきに舞ふ

隼人はやひとの薩摩の瀬戸を雲居なす遠くも吾はけふ見つるかも

百円で上下するのみの飛行機に乗りしよろこびも上質のもの

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