Archive for the '今日の一首鑑賞' category

小高賢/ネクタイをかたく絞めれば目や口が鼻を目指して集う気のする

睦月都/歩むこと知らずひた立つ橋脚が彼岸に渡すわれの自転車

廣野翔一/生活に仕事がやがて混ざりゆく鉄芯入りの靴で外へと

睦月都
人界にたちこむる異臭嗅ぎわけつ台湾料理「瑞鳳」へ往く

高島裕/労働は、寒い。つかのま有線の安室をなぞるくちびるを見た

椛沢知世
水着から砂がこぼれる昨年の砂がこぼれて手首をつたう

二三川練/文献のコピーを取れば海溝のようにインクの黒くあるノド

工藤吉生
腹をもむ いきなり宇宙空間に放り出されて死ぬ気がすんの

糸田ともよ/さみしいひとかげがゆめのしんになりぎんがをだいてかたむいてくる

工藤吉生
公園の禁止事項の九つにすべて納得して歩き出す

斉藤斎藤/ラブホテルの角を曲がってT井くんにここのカレーを食べさせたかった

工藤吉生
ボケというひどい名前の植物の背丈がオレとそう変わらない

笹井宏之/やむをえず私は春の質問としてみずうみへ素足をひたす

村上和子
あたまより鴉飛び立つ反動をわれの頸部は長く記憶す

小池光/「皇族食品」といふ会社あり台湾にお菓子の餅をつくり売る会社

桜井京子
おおミモザ、きのふの雪に耐へかねて街のはづれに身をもちくづす

重藤洋子/無言になり原爆資料館を出できたる生徒を夏の光に放つ

中野昭子
魂のぬけしししむら焼き代は千円紙幣の三枚にて足る

加賀爪あみ/ペンライトの光の海に飛び込んで私は波の一つのしぶき

北沢郁子
円柱状茎のふしごとに花咲けるデンドロビュームに春は来にけり

平山公一/現在(いま)の世に百グラム四円で買へるものH形鋼、異形棒鋼

北沢郁子
茱萸ぐみに似る木の名調べむと言ひしまま人は逝きたり未だ知りえず

中野照子/きみを葬るしろき広場に寒風(かんぷう)吹きさらわれてゆく雪の上の雪

橋本喜典
チチチチと鳴いてゐるのかこの小鳥握らばきつと温かならむ

前田透/わが愛するものに語らん樫の木に日が当り視よ、/冬すでに過ぐ

橋本喜典
風の中に花ふるへをり同情にとどまるのみが常なるわれか

蒔田さくら子/翔ばむといふ夢ならず歩まむ願ひもて歩きゐる夢くりかへし見る

小池光
雪に傘、あはれむやみにあかるくて生きて負ふ苦をわれはうたがふ 

上田三四二/わが佇つは時のきりぎし今生の桜ぞふぶく身をみそぐまで

山中智恵子
行きて負ふかなしみぞここ鳥髪とりかみに雪降るさらば明日も降りなむ

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