Archive for the '今日の一首鑑賞' category

木下利玄/遲くつきし湯元の宿のくらき灯にわれ等の食べし黑き羊羹

曽川文昭/夕空を旅客機一機離り行き工学はいま文学を呼ぶ

木下利玄/黑き虻白き八つ手の花に居て何かなせるを臥しつゝ見やる

北川草子/安売りの洋書がパラフィン紙の下で花束みたいな音をたてる

木下利玄/磯町の床屋によりて髭剃れば鏡にうつり霰ふるなり

仙波龍英/夕照はしづかに展くこの谷のPARCO三基を墓碑となすまで

木下利玄/我が顔に靑き光を受けながら藪かげ草の肌身をのぞく

藤原龍一郎/散華とはついにかえらぬあの春の岡田有希子のことなのだろう

木下利玄/子供の頃皿に黄を溶き藍をまぜしかのみどり色にもゆる芽のあり

木俣修/行春(ゆくはる)をかなしみあへず若きらは黒き帽子を空に投げあぐ

黒木三千代/このごろは鳩がたつとき大いなる紙幣の束をばらす音する

馬淵のり子/看護師の手の甲のメモ三桁の数字見ながら血を採られおり

金野友治/冬の海荒れているらし嵩上げの防潮堤より海鳴り聞こゆ

加島清子/巡回のどの病室も月の見ゆ今宵はカーテン閉めずにおかむ

熊本吉雄/川沿いの桜並木に居りまして、蕾の色づく楽しみでした。

松岡秀明/罫線も活字も美しき赤なるは麻薬を処方するための紙

熊本吉雄/先日はカレンダーをいただきありがとうございます 掛時計はありませんか

月丘ナイル/明日の朝飲むはずだった薬たち投薬トレイで雪解けを待つ

熊本吉雄/自制とは齢加えて思うなば何と無為なる時の越し方

島本太香子/息を吸い肺膨らませ吐いて泣くそれが独りで生きる始まり

熊本吉雄/なんだかね自分もガレキになっちまった ガレキはガレキを片付けられない

京表楷/氷詰めの指と指無し患者来て七時間かけ指もとに接ぐ

中山くに子/二階よりヘリに拾われ雪の夜の避難飛行すあれから三年

吉川宏志/桜まだ咲かざる闇に立ちながらアナクレオンの如き死を聞く

山内亮/避難所のラジオ体操第一は顔に両腕をこするよう廻す

佐々木実之/使ひきらざるティッシュを受け取り来し我にかなしみのごとくティッシュは溜まる

庄司邦生/濁流に胸まで浸かり年金証書頭に載せてひたすら逃げる

紺野裕子/たれかれの消息にはなし及ぶとき放射線量つもるふくしま

金野友治/田も畑も見渡す限り沼となり遺体浮く見ゆ三月十二日

井上雅史/七年を経た仙台の地下鉄の通勤客にスニーカー多し

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