Archive for the '今日の一首鑑賞' category

さそはれて窓より首を出すときにみじかすぎたり人間の首

「蠅はみんな同じ夢を見る」といふ静けき真昼 ひとを待ちをり

給油所のうえの虚空はさざなみの沼につづけり 横ながの沼

橋なかば傘めぐらせば川下に同じ橋あり人と馬行く

さかいめのなき時を生きゆうらりと瞳うるわし川底の魚

さびしさに死ぬことなくて春の夜のぶらんこを漕ぐおとなの軀

参道の夜店の面に目がふたつ開いたままに暮れどきに入る

いつか死ぬ点で気が合う二人なりバームクウヘン持って山へ行く

末なるがめぐしきものと群肝の心にしみぬしが幼聲

卓のグラスに映れるわれら人生のこの一齣も劇的ならず

針の目の隙間もおかずと押し浸す水の力を写したまへり

このビルの完成予定のきょうまでになんか変わっているはずだった

息子とは見るものが違い朝雲のバックミラーを俺は動かす

違う世にあらば覇王となるはずの彼と僕とが観覧車にゐる

わらべペダルの上に身を立ててこのつゆばれの夕べをきたる

銀行に銀の冷房臭みちて他人(ひと)の記憶のなかを生きをり

寒あおぞらかぎるもの見ずたかひかる米軍制空権のとうめい

下じきをくにゃりくにゃりと鳴らしつつ前世の記憶よみがえる夜

チャーハンの写真を撮つてチャーハンを過去にしてからなよなよと食ふ

はい、あたし生まれ変わったら君になりたいくらいに君が好きです。

人齢をはるかに超える樹下に来て仰ぐなり噫、とてもかなはぬ

予定日は桜桃忌にて霧深しわが子の晩年をなつかしむ

みづからの雨のしたたりにあぢさゐの花は揺るるにおのおのにして

人間の生まれる前は人間の生まれる確率0だつた星

身はたとへ武蔵の野べに朽つるともとゞめ置かまし日本魂やまとだましひ

鋪装厚き道にて人は行き交へり豊かに生まれうまれ継ぎつつ

塹壕に最後までありて死行きし娘子軍ぢやうしぐんの死体まだ暖かに

死んだつてひとりぼつちだ生きたつてひとりぼつちだ世界は馬鹿だ

ゆるきゃらの群るるをみれば暗き世の百鬼夜行のあはれ滲める

ぼくは流す
やさしいオンガク空のほう
人生のリセットボタンをおすとき

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